タイの不動産投資環境
● タイ人購買層の増加と多様化
10年前ぐらいまでは、高級コンドミニアムに足を踏み入れれば居住者は外国人ばかりで、タイ人の姿を見かける事はありませんでしたが、その状況は大きく変化を遂げ、最近ではどんな高級物件に行っても多くのタイ人を見かけます。伝統的にタイ人は一軒家に住む事を選好していましたが、経済成長に伴う中間層の増加、ホワイトカラー層の増加、都市化、核家族化等を背景に、都心部又BTS駅周辺の郊外にコンドミニアムを購入し居住するタイ人が年々増加しています。2011年に発生した大規模洪水時の際に、都心部には波及しなかった事がバンコク中心部への人口移動を大きく後押しした、といった見方もあります。
● 経済成長と増加する国民所得
経済成長による国民一人当たりの名目GDPを見ると、2004年には2,479ドルだったのが2013年には5,676ドルと約2.3倍に達しています。
年 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 |
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1人当たりのGDP(US$) | 1,521 | 1,689 | 1,894 | 2,088 | 2,442 | 2,826 | 3,027 | 2,481 | 1,820 | 1,989 | 1,983 | 1,836 |
年 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 |
1人当たりのGDP(US$) | 1,999 | 2,228 | 2,479 | 2,708 | 3,172 | 3,757 | 4,110 | 3,943 | 4,740 | 5,115 | 5,390 | 5,676 |
出典:IMFのデータより作成
● 激増する富裕層と中間層
タイの所得層別人口比率を見ると、2009年の時点で年間の可処分所得3万5,000ドルを超える富裕層が3.1%、1万5,000ドルを超える上位中間所得者層が14.6%となっています。この2つの層を合わせた17.1%が都心部のコンドミニアムの購買層を見られていますが、民間調査会社ユーロモニターの予想では、この購買層が2015年で30.9%、そして2020年には42.3%に拡大すると見られています。
出典:angle.prg
● バンコクのインフラ整備と急速な都市化
国王陛下72歳の誕生日、1999年12月5日に開業したBTSは、バンコク市内の深刻な渋滞問題を緩和すると同時に、市民の移動手段として定着しています。開業当初は、スクムビット線(モーチット駅~オンヌット駅)、シーロム線(サナームキラーヘンチャート駅~サパーンタークシン駅)のみであったが、その後スクムビット線がベーリン駅、シーロム線はチャオプラヤー川をまたいでバーンワー駅まで延伸されました。(2014年12月20日現在)スクムビット線はベーリング駅~ケーハ・サムット・プラーカーン駅間が現在工事中で、2017年の開業を予定しており、バンプー駅までの延伸を計画中です。又、シーロム線は、バーンワー駅~タリンチャン駅の延伸を計画しています。
路線図 (BTS+MRT)
路線・駅名
駅番号 | 駅名 | 所在地 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
N8 | モーチット駅 | チャトゥチャック区 | 地下鉄チャトゥチャック公園駅と接続 | |
N7 | サパーンクワーイ駅 | パヤータイ区 | ||
N6 | セーナールアム駅(予定駅) | |||
N5 | アーリー駅 | パヤータイ区 | ||
N4 | サナームパオ駅 | パヤータイ区 | ||
N3 | アヌサーワリーチャイサモーラプーム駅 | ラーチャテーウィー区 | ||
(戦勝記念塔駅) | ||||
N2 | パヤータイ駅 | ラーチャテーウィー区 | エアポート・レール・リンクと接続 | |
N1 | ラーチャテーウィー駅 | ラーチャテーウィー区 | ||
CEN | サイアム駅 | パトゥムワン区 | シーロム線と接続 | |
E1 | チットロム駅 | パトゥムワン区 | ||
E2 | プルンチット駅 | パトゥムワン区 | ||
E3 | ナーナー駅 | |||
E4 | アソーク駅 | スクムウィット通り-ソイ21(ソイアソーク) | 地下鉄スクムウィット駅と接続 | |
E5 | プロームポン駅 | |||
E6 | トンロー駅 | スクムウィット通り-ソイ55(ソイトンロー) | ||
E7 | エカマイ駅 | スクムウィット通り-ソイ63(ソイエカマイ) | 東バスターミナルに隣接 | |
E8 | プラカノン駅 | |||
E9 | オンヌット駅 | |||
E10 | バーンチャーク駅 | プラカノン区 | 2011年8月12日開業 | |
E11 | プナウィティ駅 | プラカノン区 | 2011年8月12日開業 | |
E12 | ウドムスック駅 | バーンナー区 | 2011年8月12日開業 | |
E13 | バンナー駅 | バーンナー区 | 2011年8月12日開業 | |
E14 | ベーリング駅 | バーンナー区 | 2011年8月12日開業 | |
E15 | サムロン駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E16 | プーチャオサミングプライ駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E17 | エラワン・ミュージアム駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E18 | ネーヴァル・アカデミー駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E19 | サムット・プラーカーン・シティホール駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E20 | シーナカリン駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E21 | プレックサー駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E22 | サイ・ルアット駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E23 | ケーハ・サムット・プラーカーン駅 | サムットプラーカーン県 | 工事中 | |
ムアンサムットプラーカーン郡 | ||||
E24 | サワンカニワット駅 | 計画中 | ||
E25 | ムアン・ボラン駅 | 計画中 | ||
E26 | シチャンプラディット駅 | 計画中 | ||
E27 | バンプー駅 | 計画中 |
シーロム線
順序は北から
駅番号 | 駅名 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | サナームキラーヘンチャート駅 | パトゥムワン区 | |
(国立競技場駅) | |||
CEN | サイアム駅 | パトゥムワン区 | スクムウィット線と接続 |
S1 | ラーチャダムリ駅 | パトゥムワン区 | |
S2 | サラデーン駅 | バーンラック区 | 地下鉄シーロム駅と接続 |
S3 | チョーンノンシー駅 | バーンラック区 | バンコクBRT |
4 | スックサーウィッタヤー駅 | ||
(予定駅) | |||
S5 | スラサック駅 | サートーン区 | |
6 | サパーンタークシン駅 | サートーン区 | チャオプラヤエクスプレス(水上バス)と接続 |
工事のため廃止予定 | |||
S7 | クルン・トンブリー駅 | クローンサーン区 | 2009年5月15日開業 |
8 | ウォンウィアン・ヤイ駅 | クローンサーン区 | 2009年5月15日開業 |
タイ国鉄メークローン線とは徒歩連絡(徒歩15分程度) | |||
S9 | ポーニミット駅 | トンブリー区 | 2013年1月12日開業 |
10 | タラートプルー駅 | トンブリー区 | 2013年2月14日開業 |
バンコクBRT | |||
S11 | ウターカート駅 | トンブリー区 | 2013年12月5日開業 |
S12 | バーンワー駅 | パーシーチャルーン区 | 2013年12月5日開業 |
バンウェーク駅 | 計画中 | ||
クラチョームトーン駅 | 計画中 | ||
バンプロム駅 | 計画中 | ||
イントラワート駅 | 計画中 | ||
プロムラチャチョンニー駅 | 計画中 | ||
タリンチャン駅 | 計画中 | ||
タイ国鉄南本線タリンチャン駅と接続予定 |
MRT
ブルーライン(バーンスー駅~フワランポーン駅)が2004年7月3日に開業。現在は、ターブラ駅~バーンスー駅間とフワランポーン駅~ラックソーン駅間を建設中で、2016年の開業を予定しています。又、新たにパープルラインが建設中でこちらも2016年の開業を目指しています。
ブルーライン(チャルームラチャモンコン線)
路線名 | 路線色 | 営業開始 | 区間 | 営業キロ | 駅数 |
---|---|---|---|---|---|
ブルーライン | 2004年 | バーンスー駅 - フワランポーン駅 | 20.8 | 18 |
ブルーライン(チャルームラチャモンコン線)
フワランポーン駅から先、ラックソーン駅まで(13.4km)と、バーンスー駅から先、タープラ駅まで(13.0km)が延伸工事中であり、2016年の完成予定です。これらの工事が完了すると、路線はひらがなの「の」と同じ形になります。(タープラ駅で接続)
駅記号 | 駅名 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|
タープラ駅 | 工事中、地上駅 | ||
ジャランサニットウォン13駅 | 工事中 | ||
イエークファイチャイ駅 | 工事中 | ||
バーンクーンノーン駅 | 工事中 | ||
バーンイーカン駅 | 工事中 | ||
シリントン駅 | 工事中 | ||
バーンプラット駅 | 工事中 | ||
バーンオー駅 | 工事中 | ||
バーンポー駅 | 工事中 | ||
タオプーン駅 | 工事中、パープルラインタオプーン駅と接続予定 | ||
BAN | バーンスー駅 | チャトゥチャック区 | 国鉄バーンスー駅と接続 |
KAM | カムペーンペット駅 | ||
CHA | チャトゥチャック公園駅 | BTS・モーチット駅と接続 | |
PHA | パホンヨーティン駅 | ||
LAT | ラートプラーオ駅 | ||
RAT | ラッチャダーピセーク駅 | ディンデーン区 | |
SUT | スッティサーン駅 | フワイクワーン区 | |
HUI | フワイクワーン駅 | ||
CUL | タイ文化センター駅 | ディンデーン区 | |
RAM | ラーマ9世駅 | ||
PET | ペッチャブリー駅 | ラーチャテーウィー区 | エアポート・レール・リンク |
マッカサン駅と接続 | |||
SUK | スクムウィット駅 | ワッタナー区 | BTS・アソーク駅と接続 |
SIR | シリキット・コンベンション・センター駅 | クローントゥーイ区 | |
KHO | クローントゥーイ駅 | ||
LUM | ルンピニ駅 | サートーン区 | |
SIL | シーロム駅 | バーンラック区 | BTS・サーラーデーン駅と接続 |
SAM | サームヤーン駅 | パトゥムワン区 | |
HUA | フワランポーン駅 | 国鉄クルンテープ駅と接続 | |
ワットマンコンカマラワート駅 | 工事中 | ||
ワーンブラパ駅 | 工事中 | ||
サナンチャイ駅 | 工事中 | ||
イサラパープ駅 | 工事中 | ||
タープラ駅 | 工事中、地上駅 | ||
バンパイ駅 | 工事中、地上駅 | ||
バーンワー駅 | 工事中、地上駅 | ||
BTS・バーンワー駅と接続予定 | |||
ペチャカセム48駅 | 工事中、地上駅 | ||
パーシーチャルン駅 | 工事中、地上駅 | ||
バーンケー駅 | 工事中、地上駅 | ||
ラックソーン駅 | 工事中、地上駅 |
パープルライン
路線名 | 路線色 | 営業開始 | 区間 | 営業キロ | 駅数 |
---|---|---|---|---|---|
パープルライン | 2016年(予定) | バンパイ運河駅 - タオプーン駅 | 20.94 | 16 |
■パープルライン
総延長は20.94kmであり、2016年中ごろに開通予定です。
駅番号 | 駅名 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|
P1 | バンパイ運河駅 | 工事中 | |
P2 | バンヤイマーケット駅 | 工事中 | |
P3 | バンヤイ三叉路駅 | 工事中 | |
P4 | バンプルー駅 | 工事中 | |
P5 | バンラックヤイ駅 | 工事中 | |
P6 | バンラックノイターイット駅 | 工事中 | |
P7 | サイマー駅 | 工事中 | |
P8 | プラナンクラオ橋駅 | 工事中 | |
P9 | ノンタブリー1交差点駅 | 工事中 | |
P10 | シーポンサワン駅 | 工事中 | |
P11 | ノンタブリー公共施設センター駅 | 工事中 | |
P12 | 保健省駅 | 工事中 | |
P13 | ティワノン駅 | 工事中 | |
P14 | オンサワン駅 | 工事中 | |
P15 | バンチョン駅 | 工事中 | |
P16 | タオプーン駅 | ブルーラインタオプーン駅と接続予定 |
● 右肩上がりの不動産価格(バンコク)
前項「タイ不動産投資の魅力」でも記しましたが、2000年以降不動産価格は右肩上がりの上昇を続け、都心部の物件の平米当たり販売価格は4倍以上に達しました。これを背景に、タイ人は不動産投資を確実で堅実な投資と見ており、中長期の保有であれば確実に資産価値が上がり、その間の賃貸収入も安定していると考えています。
● アジア近隣諸国からの投資
欧米人、日本人によるタイコンドミニアムへの積極的な投資はありましたが、最近増えているのは、中国、香港、台湾、シンガポール等近隣アジア諸国からの投資です。自国の不動産が高騰を続ける中、割安なタイ不動産への注目が集まっているのです。大型コンドミニアムの発売時には、そういった人々がタイ人購入者と一緒になって列に並ぶ姿は日常的に目にするようになっています。
● ピークアウトするコンドミニアム着工件数(バンコク)
外資系不動産大手CBREの調査では、2014年をピークにコンドミニアムの開発は減少に転ずると推測されています。特に2016年以降は大きく減少が見込まれています。ここ3年間に関しては、都市周辺部(MIDTOWN)の竣工件数は大幅な伸びを見せているものの、都心部(DOWNTOWN)では、2012年より横ばいとなっています。
*出典:CBRE
● 底堅く推移するコンドミニアムの占有率(バンコク)
海外からの駐在員が賃借人の90%以上を占めると推定される、家賃20,000バーツ以上のコンドミニアム物件の占有率は、2012年をピークに微減に転じていますが、直近データ(2014年第2四半期の数値)でも90%と高い数字が維持されており、底堅く推移している事が理解できます。スクムビット地区ソイ1-63と2-42、シーロム・サトーン地区、ルンピニ地区といった海外からの駐在員層に人気のあるエリアでは、30~40%のコンドミニアム物件が投資家により購入されており、外国人駐在員世帯にレンタルされています。2014年第2四半期における労働許可証の発行数は72,000と前年同時期より約10%の増加が見られました。都心部の新築物件数の停滞、外国人駐在員の増加を背景に、都心部高級物件におけるコンドミニアムの家賃相場は、人気物件では上昇が見られ、一般的な物件でも横ばい、と堅調に推移しています。
*出典:CBRE